ビリギャル
【映画狂的評価】 映画館で観てもよい秀作

正直まったく期待していなかった。年末の休日の夜たまたま我が家のリビングで今日観るTV番組の決定権が自分だったので、ドキュメンタリー映画のわりと評判よい『次郎は鮨の夢を見る』でも見るかと再生し始めたとたんに、嫁と子供に「つまらない!」と責められ強引にTV放映中の『ビリギャル』にチャンネルを変えらた。
「おいテレビ、今日はパパの日だろ!」
「いいの、いいの、ビリギャルの方が絶対に面白いから。」
「なんだよ、それ!」
と言いながらも80過ぎの鮨屋の爺さんの話より、制服着た女の子でも観てた方が楽しいそうだなと納得しつつ、鼻の下を伸ばして鑑賞していたのに・・・いつしか目頭が熱くなるのをこらえながらのマジ鑑賞。導入部で有村架純演じるヒロインのさやかが聖徳太子を「セイトクタコ」って読んだり、志望大学の慶応大学が漢字で書けないのかケーオーと書くシーンは自然に面白かったし、朝焼けの中「アイ、マイ、ミー、マイン」とか言いながらチャリで走る姿に何事かに没頭し一生懸命やる人の姿に本来人が持つ命の美しさのようなものを真面目に感じたりもした。また、そう単純なものではないと思うが自分の夢を子供に強制する父親の姿は思春期を向かえる子供は一度は感じるであろう親の姿で、その親が最後には子供達の成長と共に成長してゆく姿に感動せざるをえなかった。
監督の土井裕泰さんは秀才らしく、早稲田大学政経学部在学中に8ミリ映画を学園祭に出品したり劇研に所属していたそうです。大学卒業後はTBSに入社し、TBSテレビの制作1部所属のテレビドラマの演出家となります。TBSのエースディレクターと言われているだけのことはあって雀を演出として画の中で飛ばしてみたり、ノートに書かれた手書きの文字を現実の世界にオーバーラップさせ、さやかの心情をしっかりと鑑賞者に伝え、宅配屋で夜まで働くお母さんの所に、さやかがずぶ濡れで泣きながら会いにいく演出なども見事だった。そんな感じで、ちらほらとテレビのディレクターならではの目立たないけど優れた演出もしっかりと散りばめられていた。ただカメラマンがTVのカメラマンなのか構図が全然良くなくて画の美しさ的には映画館の大画面に耐えられるようなレベルではなかった。映画なんだからワンカット、ワンカットが美しくなければならないハズなのに、その辺りの映画制作者として当然の事を理解していないのが残念ではあったが、演者さん達の魅力溢れる演技で見事にそれをカバーしていた。
TVドラマの延長線上にあることが否めない作品ではあるがストーリー的には超感動的です。定番のテーマではありますが夢を持つことの大切さ、困難を乗り越えてゆく人の輝きとか、成功はたやすく手に入らないからこそ輝いていることや人は一人で生きているわけではないという大切なことを見事に分かりやすく理解させてくれる映画です。受験という限定された世界の中で見事に人生の縮図が描かれています。
少し失敗したらすぐに諦めそうになるさやか、それでも周りの人達に支えられながら見事志望大学に合格するストーリー展開はチープというか誰でも思いつきそうな安易な設定ではある。現実の世界では本当に支えて欲しい人が自分の意思を貫こうとした時は妨害者に豹変していったりするものだが、まーそのあたりのリアルさも父親を通して描かれているので一応良しとしましょう。
【制作者的視点】いくつか地味に学べる作品
映画制作者的視点から観れば、それほど学べるものは多くはないが以下の点が勉強になりました。
■模試の点数に失望したさやかが、もう疲れたと母親に慰められるくだりで突如さやかが赤ちゃんだった頃の写真のコラージュがインサートされる。
モンタージュの手法も、こういった的確なタイミングで入ってくるところは商業映画ながらも上手い。そして、ラストにその写真が壁に飾られていた写真であったことがわかり感動が二倍に膨らんで非常に良かった。
■ラストずっと、さやかを支えてきた塾の先生の手紙の内容の声が途中できれ、また始まり、そしてまた途切れラストの感動的にシーンに重なっているくだり。
おそらく尺あわせ的な、観せたい画と先生の手紙の内容を編集で合わせるとこうい風なナレーションのブツ切りでしか編集できなかったのであろうが結果的には人の本当の感動を言葉に表す時のとまどいのようなものが間として描かれているように感じられて良かった。

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